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2015年12月9日水曜日

香りと音 gamut of odors di Piesse

音と香りについて。
日本語では、香りを心を傾けて味わうことを「香りを聞く」
と言いますね。
香りの調子を表すのにシトラス・ノート、フローラル・ノート
など、「ノート note」という言葉を使いますが、
「ノート note」はもともと音、音符などを意味する言葉です。
耳と鼻、違う感覚を結びつけた発想をとても興味深く思っています。


19世紀のイギリスの調香師 George William Septimus Piesse の著書
The Art of Perfumery and the Methods of Obtaining the Odours of Plants
より。
香階 the gamut of odors を紹介します。

もちろん、この香階がすべての調和を表している訳ではありませんし、
時に、音はきれいに調和しても香りは調和しない、
ということもあります。
けれど、調和や共鳴という捉え方を香りに当てはめるアイディアは
感覚的に分かりやすく、
音楽が好きな身には、香りが音符になぞらえられているというのが
堪らなく愉快なのです。


香階 the gamut of odors
 (香りの音階)
下に日本語の香料名を記しています


揮発性の高い香りは高い音に、揮発性が低く持続する香りは低い音に、
という風に、
動物性の香料も含む当時の48の香料を、音符(ノート note )に当てはめ
音階のように並べたもので、
調和した音を重ねるように、香りを組み合わせるという手法が紹介されています。

例えば低いドとドで、パチュリとサンダルウッド
中高音のドと高音のドで、バラとジャスミンなど。
オクターブでの組み合わせは、すっきり調和するように配置されています。

本で紹介されているのは長3和音(メイジャー・トライアド)

コードC(ドミソ)
ド サンダルウッド
ド ゼラニウム
ミ アカシア
ソ オレンジフラワー
ド カンファー

コードF(ドファラ)
ファ ムスク
ド ローズ
ファ チュベローズ
ラ トンカ豆
ド カンファー
ファ 黄水仙

なるほど!
すてきな組み合わせになりそう。
この香階を眺めながら、いろいろなコードの組み合わせを辿って
遊んでみるのも面白い。

コードEm(C Bass)(ミソシ ド)だと、
オレンジ、ライラック、スペアミント、パチュリ
なかなかメランコリックな響きが感じられそうです。

コードG(B Bass)(ソシレ シ)だと、
オレンジフラワー スペアミント ベルガモット クローブ
洒落た雰囲気ですね。

逆に、好きな精油の組み合わせが、どんな音の重なりになるか
辿るのも面白い。
ラベンダー、オレンジ、パチュリ の好まれやすい組み合わせは、
ラとミとドで、Am
きっちりと馴染みのあるコードを成していて驚き!
そして、寂しい響きなのが意外!

ああ!
半音(ピアノの黒い鍵盤にあたる音)のノートもあれば!
E♭m7 (ミ♭ ソ♭ シ♭ レ♭)で、TAKE FIVE のブレンド
だとか、
A♭m7 (ラ♭ ド♭ ミ♭ ソ♭)で、'ROUND MIDNIGHT のブレンド
だとか…
お気に入りのジャズの曲調のブレンドが一目でわかるのに。


ピエッスの香階(高音→低音の順に記しています)

ト音
ファ:シベット
ミ:ヴェルベーヌ(レモンバーベナ)
レ:シトロネラ
ド:パイナップル
シ:ペパーミント
ラ:ラベンダー
ソ:マグノリア
ファ:アンバーグリス
ミ:セドラ(シトロン、丸仏手柑)
レ:ベルガモット
ド:ジャスミン
シ:スペアミント
ラ:トンカ豆
ソ:ライラック
ファ:黄水仙
ミ:オレンジ(水蒸気蒸留)
レ:アーモンド
ド:カンファー
シ:サザンウッド(キダチヨモギ)
ラ:ヘイ(刈草、干草)
ソ:オレンジフラワー
ファ:チュベローズ
ミ:アカシア
レ:スミレ

へ音
ド:バラ
シ:シナモン
ラ:バルサム・トルー
ソ:スイートピー
ファ:ムスク
ミ:オリス(イリス、ニオイアヤメ)
レ:ヘリオトロープ
ド:ゼラニウム
シ:ストック と カーネーション
ラ:バルサム・ペルー
ソ:夜来香
ファ:カストリウム(海貍香)
ミ:カラムス
レ:クレマティス
ド:サンダルウッド
シ:クローブ
ラ:スチラックス
ソ:プルメリア(フランジパニ)
ファ:ベンゾイン
ミ:ニオイアラセイトウ(ウォールフラワー アブラナ科)
レ:バニラ
ド:パチュリ